はじめに:バックアップの”手作業”を卒業しよう
製造業では品質記録、検査データ、製造履歴、図面など、失ってはならないデータがkintoneに日々蓄積されます。 ISO認証や監査対応では「データの保管体制」を問われますが、手動バックアップは抜け漏れの温床です。
「毎日バックアップを取らないと…」と分かっていても、日々の業務に追われて後回しになる。
これは製造業に限らず、多くのkintoneユーザーが抱える課題です。
本記事では、n8nを使ってkintoneの全データ(添付ファイル含む)を毎朝3時に自動バックアップ→Google Driveへアップロード→結果をkintoneに記録までを一気通貫で実行する仕組みを解説します。
全体アーキテクチャ(概要)
これで解決できること
- 手作業ゼロ:一度設定すれば、毎朝勝手に動き続ける
- 抜け漏れゼロ:対象アプリを登録するだけで、全アプリを自動処理
- 添付ファイルも完全保存:図面やPDFも漏れなくバックアップ
- 監査対応:実行履歴がkintoneに残り、「いつ・何を・どうした」が証明可能
- 迅速な復旧:Google Drive上で世代管理でき、任意の日付に戻せる
使う道具と役割
kintone:データのハブと実行履歴の保管場所
今回のワークフローでは、バックアップ対象管理アプリ、結果保存アプリを作成し利用しています。
n8n:ワークフローを配線
定時実行トリガー、kintone REST APIの実行、ループ処理による一括処理、サーバーコマンドの実行、GoogleDriveへの連携をしています。
cli-kintone:kintoneの公式コマンドラインツール
アプリのデータをCSV出力、添付ファイルの保存など、バックアップに必要な作業を行う際に利用しています。
Google Drive:クラウドストレージ
今回の例では、バックアップの保存先にGoogle Driveを使用しています。
実装
1) 定期実行と初期設定
Triggerノードを「Schedule Trigger」にし、毎朝3時に実行するよう設定。
- Trigger interval:Days
- Days Between Triggers:1
- Trigger at Hour:3am
- Trigger at Minute:0
2)定数の登録
後続のノードで利用する値をここで定義している。
以下の内容はサンプルです。
- バックアップ先ディレクトリ:
./kintone_backup
(./kintone_backup/[App_ID]/となるように設計) ログディレクトリ:
./log
Google DriveフォルダID
- タイムゾーンとタイムスタンプ(
Asia/Tokyo
タイムゾーンでyyyy-LL-dd
形式)
3) バックアップ対象の取得と分岐
n8nの「HTTP Request」ノードを使い、バックアップ対象管理アプリから対象リストを取得します。
取得件数が0件の場合は、その旨をエラーとしてログに記載し終了。
4) ループ処理(各アプリごとに実行)
取得したアプリを、1件ずつループ処理します。
行っている処理の内容は以下の通り。
- バックアップの一時保存ディレクトリの存在チェック
(./kintone-backup/[APP_ID]/が無ければ作成) - レコードデータ(CSV)をエクスポート
- バックアップ結果をログ出力
- 添付ファイルをダウンロード
5) ログのまとめと圧縮
ループの完了後、それぞれのバックアップ結果ログを取りまとめ、後ほどログ保存時に適した形に整形する。
また、サーバーコマンドを実行し(tar圧縮)、バックアップディレクトリを一括圧縮する。
6) Google Driveへアップロード
「readFile」ノードを使い、ファイルをバイナリとして読み込む。
「Uploade File」ノードを使い、Google Driveへアップロード。
※Google Driveのノードは標準で搭載されているが、認証情報の設定が必要。
7) 結果ログを保存
アップロード結果のログと、アプリバックアップのログを統合し、文章として整形する。
最後に「HTTP Requestノード」を使ってkintoneへ結果を保存する。
運用設計のヒント
ログと監査のための記録
- n8nの実行IDをkintoneに残すと、失敗時の再実行や調査が容易
- 処理ログに各アプリの成功/失敗を記録し、どこで止まったか可視化
- バックアップ実施の証跡として監査時に提示可能
保存先の世代管理
- 日次でファイル名が変わるため、自然に世代管理される
- 古いファイルを削除する方法を検討する
容量とコストの試算
- アプリ量、レコード数、添付ファイルの種類によって容量が変わる
- Google Workspace Business Standard契約で2TBまで拡張可能
よくある質問
Q. cli-kintone のインストール方法は?
kintoneの公式サイトからダウンロード可能です。
n8nが動作するサーバーにインストールし、PATHを通しておく必要があります。
Q. ゲストスペース内のアプリもバックアップできる?
できます。--guest-space-id
オプションにスペースIDを指定してください。
ワークフローでは、対象アプリ管理にスペースIDを登録しておけば自動で対応します。
Q. 複数ドメインのkintoneをバックアップしたい
A. ドメインごとにワークフローを分けるか、Define ノードでドメインリストを定義し、外側でループさせる設計にします。
Q. バックアップからの復旧方法は?
kintoneの公式サイトからダウンロード可能です。
n8nが動作するサーバーにインストールし、PATHを通しておく必要がありますA. tar.gzを展開し、cli-kintone record import
コマンドで各アプリにインポートします。
添付ファイルも --attachments-dir
で指定して復元可能です。
まとめ
- Schedule Trigger → 対象取得 → ループ処理 → 圧縮 → Google Drive → 結果記録 の一筆書きでバックアップを自動化
- エラー時は結果をkintoneに記録し、失敗箇所を可視化
- まずは対象アプリを5~10個に絞り、実行ログの確認と復旧テストを行ってから本番運用へ
手作業のバックアップは“やらなきゃ”と思いつつ後回しになりがちです。
n8nで自動化すれば、「気づいたら毎日バックアップされている」状態を実現できます。
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最後に
株式会社アディエムでは、kintone × 生成AIで日々の業務改善に取り組んでいます。
今回ご紹介したようなワークフローの他にも、お客様の業務に合った改善をご提案させて頂きます。
無料相談も行なっておりますので、お気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。