kintoneで生産管理・工程管理システムを作るには何から始めるの?小さなアプリから作らない理由

こんにちは、東京の旅行代理店から地元の製造業に総務担当として転職したジムリンです!

製造業未経験で上司からいきなり「kintoneで生産管理・工程管理システムを作ってみて!」なんていわれたら、みなさんは何から手をつけますか?

ボクの場合、製造業向けのサンプルアプリを探してつなぎ合わせようとしたんですけど、ある問題が、……。

今回は、ボクの前に立ちはだかった「最初の壁」と、ある方に教えてもらった「システム設計で最初にやるべきこと」をお話しします。

生産管理・工程管理システムに必要なアプリって何!?

「とりあえず何か形にしないと!」と思ったボクは、「kintone 製造業 サンプルアプリ」で調べました。

すると、無料で使えるアプリがいっぱいあるじゃないですか!

引用:kintone公式サイト

ウチの工場に必要なアプリをこのなかから見繕って、つなぎ合わせれば生産管理システムができると思ったんです。

ところが、いっぱいありすぎて、どれを使ったらいいかわからへん!

ウチの工場に必要なアプリってどれやねん!

という状況に陥りまして……。

そもそもうちの生産工程ってどうなってるの?

サンプルアプリを見ていくと、工程ごとにアプリを入れるのが良さそうだと思いましたが、ここでも壁に衝突します。

そもそも、ウチの工場の工程ってどうなっているのかがわからなかったんです!

工程がわからなければ、必要なアプリも決められないと思いませんか?

そこで、工場に行ってみたんですが、どういう名前の工程がどのようにつながっているのかって、見てもわからないんです。

工場で働くみんなは忙しそうで声を掛けることもできず、ボクはいったん事務所に戻りました。

入社半年も経つのに「ウチの工場ってどういう工程があるんですか?」なんて聞いたら、「こいつ半年間何してたんだ?」って思われそうじゃないですか。

実際、そんなこと言う人はいないんですけど。

いろいろ考えた結果、自力で何とかしなくては!と思い、再び机に向かったんです。

まずは工場全体の業務フロー図を描こう!

ボクが目を閉じてしばらく悩んでいると、どこからともなく声が聞こえてきました……。

サンプルアプリをつなぎ合わせてもうまくいかないよ!」って。

考えすぎるあまり、寝ちゃったんだ、これは夢だって思いました。

「いけない、起きなきゃ」と思って目を開けると目の前にいたんです。あの方が。

そして言いました。

「わたしは古くからこの工場に住み着いている妖精、コー・ジョー。

工場のことならなんでも知っているよ!」

工場に妖精っているんですね。

もうボクは、本当にどうしたらいいのかわからなかったので、藁にもすがる思いでコーさんに助けを求めました。

「ボクはジムリンっていいます!コーさんは先輩ですよね?

ボク、工場のことなにもわかっていないのに、生産管理システムを作らなくちゃいけなくて……。」

結論、ボクはコーさんから大きなヒントをもらいました。

ここからは、コーさんとボクのやりとりを忠実に再現しますね。

ボク

「サンプルアプリをつなぎ合わせる方法はダメなんですか?

イチからアプリを作ると時間がかかりそうだし、あるモノを使ったほうが効率的だと思うんですが。」

コー・ジョー

「サンプルアプリをつなぎ合わせるやり方では、自社に最適化された生産管理システムは作れないよ。

たしかに、生産管理システムっぽい形にはなるけれど、自社のフローや業務に合っていなければすぐに使えなくなるね。

だから、まずは工場全体の業務フロー図を描いて、自社の課題から本当に必要な機能を見つけないと!」

あまり理解できていないボクに、コーさんは詳しく説明を始めました。

システム設計は「全体最適」で考えよう

コー・ジョー

「ジムリンの考え方は部分最適というよ。

最初に小さなアプリに注目すると、たしかに目の前の工程は改善されるかもしれないけれど、工場全体の流れの改善につながらないことがあるんだ。」

ボク

「工場全体の流れってどういうことですか?生産管理システムとどう関係があるんですか?」

コー・ジョー

「材料を仕入れるところからお客さまに届けるまでの一連の流れが「工場全体の流れ」だとしよう。

例えば、製造の工程が機械の不具合で止まってしまうと、どうなると思う?」

ボク

「あ、納期どおりに納品できなくなるかも……。」

コー・ジョー

「そう、だからそういったトラブルが起こらないように、また起こったときすぐに解決できるように、仕入情報や生産スケジュールなんかを管理するのが生産管理システムの役割になるよね。」

ボク

「なるほど、生産管理システムの役割って考えてなかったです。

話を戻しますが、なぜ部分最適で考えるとダメなんでしょうか?」

コー・ジョー

「工場全体を川に置き換えて考えてみよう。

必要そうなアプリを1つずつ作ると、それぞれが島のように点在する。

島のなかだけは便利になるかもしれないけれど、川の流れはどう?スピードは?」

ボク

「変わりませんね……。」

コー・ジョー

「そう!つまり工場全体の流れはちっとも変わらない。 これが部分最適なんだ。

例えば、受注管理や在庫管理など全部の工程をいっぺんに最適化しようとしたらどうなるかな?

各工程で要件を洗い出して、担当ごとにアプリを作って、細かい仕様を決めて……とやっているうちに、膨大な時間と労力がかかってしまう。

しかも、工場全体の流れは変わらない。

結局、全体の流れを意識せずにバラバラにアプリを作っても、結局は遠回りになるんだよ。

サンプルアプリを使ったとしても同じことだよね?

だからこそ全体最適で考える必要があるんだ!」

大事なのは工場全体の「流れ」を見ること

ボク

「全体最適ってどういうことですか?さっきの話だと、川を見るってことですか?

コー・ジョー

「そう、川に注目するんだ。

島を増やすことでも橋でつなぐことでもなく、川の流れそのものを良くする。

これはTOC理論と呼ばれる考え方に基づいていてね。

工場全体の流れを見たあとで、その流れをせき止めている部分(ボトルネック)を見つけ、そこを改善していくことがポイントなんだ。」

ボク

「TOC理論っていうのがあるんですね……。全然知らなかったです。

つまり、 流れを止めている場所を見極めて、集中的に改善するためのシステムを作ることで工場全体の流れが変わるってことですね!?」

コー・ジョー

「そう、全体を俯瞰して流れを意識する。

そうやって全体最適の視点で生産管理システムを設計すると、結果につながるんだ!」

工場全体の業務フローを描いてみよう!

ボク

「納得できました!

TOC理論なるものがあるということは、製造業の人たちは部分最適で業務改善を図ろうとしてきて失敗をしてきたんでしょうね。

それで、全体最適でシステム設計をするには、何から始めるんでしょうか?」

コー・ジョー

「まずは、工場全体の流れを把握するために、業務フロー図を描いてみよう!」

業務フローは工場の入口から出口までを「ざっくり」描こう

ボク

「工場全体の業務って、どこからどこまで描けばいいんですか? 。」

コー・ジョー

「いい質問だね。生産管理に焦点をあてるなら、まずは工場の入口から出口までくらいで大丈夫

受注から出荷までを一枚に描いてみれば十分だよ。

描いたあとで『ここは順番が違うよ』『この工程が抜けているよ』と周りにフィードバックをもらって修正すればいいので、まずはざっくり描いてみよう。」

ボク

「なるほど…。上流から下流までの川を描くイメージですね。

魚や石まで細かく描く必要はないと。」

コー・ジョー「そのとおり!」

業務フローを描くときは付箋・Excel・ITツールを使おう

コー・ジョー

「業務フロー図を描くときはツールを使おうね。大きく分けると3つあるよ。

  1. 付箋と模造紙を使う
  2. Excelを使う
  3. ITツールを使う

手書きでも十分だけど、共有や修正を考えるとExcelやITツールのほうが便利な場面も多いよ。」

draw.ioを使って業務フロー図を描いてみよう

ボク

「今回は、draw.ioを使ってみました!」

コー・ジョー

draw.ioは、無料で使えるオンラインの図解ツールだね。

フローチャートや業務フロー図を簡単に作れるから、工場の流れを整理するのにぴったり!」

ボク

「はい。直感的に使えて、初心者のぼくでもすぐにフロー図を描けました!これです。

実際に描いてみると、工程ごとのつながりや順番がイメージしやすくなりました。

見にくいので 整理したものもご覧ください。

今まで工場の全体像ってわかっていませんでしたが、一枚の図に起こすとなんとなくわかってきますね。」

コー・ジョー「そう、それが大事なんだ。 これでシステム設計の第一歩は完了だよ。」

【教訓】 システム設計は工場全体の業務フローを描くところから! 「全体最適」の考え方が重要

妖精のコーさんのアドバイスがなければ、危うく部分最適の生産管理システムを使って、現場の人たちに「これは使えないね!」って言われちゃうところでした。

それだと作る意味がないし、時間の無駄ですもんね(;’∀’)

そもそも、何のために生産管理システムを作るのか、そのために何から考えるのかという視点が足りていなかったです。

今回、コーさんからボクが学んだことをまとめてみました。

・アプリを並べても、使える生産管理システムにはならない
・部分最適で進めると、手間や時間ばかりかかって遠回りになる
・大事なのは、工場全体の流れを意識して全体最適で考えること
・そのためには、まず工場全体の業務フローをざっくり描いて全体像をつかむこと

ボクと同じようにいきなりkintoneで生産管理システムを作れといわれた人がいたら、ぜひ参考にしてみてください。

次回は、今回作った業務フロー図をもとに生産管理システムを作ります!

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