
こんにちは、ジムリンです!
前回、工場全体の業務フロー図を描いて、次のステップとしてボトルネック工程を探すため、現場へのヒアリングを開始しました。
でも、そこで新たな壁にぶつかることになったんです……。
今回は、山積みの課題の中から「真のボトルネック」を見つけ出すための、優先順位のつけ方についてお話しします。
【あらすじ】
地元の小さな製造工場に総務として転職したボク、ジムリン。入社から半年経ったある日、上司から突然「kintoneで生産管理システムを作ってほしい!」と指令を受けることに。妖精コー・ジョーの助けで、システム設計には「全体最適」の視点が重要だと学んだボクは、まずはボトルネック工程を探すため、現場の声に耳を傾けることにしましたが……。
目次
課題が山積みで、どれがボトルネックかわからない!
意気揚々と現場ヒアリングを始めたボクでしたが、すぐに頭を抱えることになりました。
各部署の担当者から、出るわ出るわ、不満の嵐……。
・営業担当「納期を聞かれてもすぐ答えられないんです。結局いつも工場長に電話して確認してますね。」
・作業員A「急な飛び込み案件が入ると、そのたびに作業が止まるんです。工場長に確認しないと進められないんで……。」
・作業員B「検査の順番待ちで、いつも仕掛品が山積みになっちゃうのがツライっす。」
・購買担当「在庫の数字が合わないと怖くて発注できないんです。最終的には工場長に現物を見てもらわないと不安で……。」
・社長「ジムリン君、とにかく納期遅れだけは無くしてくれよ。お客さまからのクレームが一番困るんだからな!」
たくさんの声が集まる一方、肝心の工場長に話を聞いても「まあ… なんとかやってるよ」と歯切れが悪い返事しかもらえませんでした。
工場長の態度だけが妙に浮いて見えて、「なぜ工場長だけ、あんなに反応が悪いんだろう?」と違和感を抱きました(*_*)
実はこれ、あとで理由がわかるんです……。このとき気づいていれば、あんなことには……(..;)
たくさん不満が出た工程を優先しようかな?
ヒアリングで集まった声をノートにまとめるボク。
うーん、これだけたくさんの声が上がるってことは、やっぱり製造工程がボトルネックなのかな?
でも、製造だけでも問題が多すぎる…。
結局、本当のボトルネックはどこにあるんや!?
ボクは完全に途方に暮れてしまいました。
課題は「声の大きさ」ではなく「出荷量を左右するか」で選ぶ!
そのとき、ふわりと妖精のコー・ジョーが現れました。
ジムリン、声が多いからといって、そこがボトルネックとは限らないよ
え、コーさん!
でも、みんなが困っているんだから、全部解決しないと……。
社長や現場の声は、どれも正しい。
でもね、本来の目的を忘れていないかい?
改善の目的は『全体の成果を上げる』ことなんだ。
だから、課題に優先順位をつけて、本当に効果のあるボトルネックを見つけ出す必要があるんだよ。
全体最適を基準にすると、優先度の高い「真のボトルネック」が見えてくる
全体最適の視点……。これはボクが最初にコーさんから教わったことです。
全体最適で見るってどういうことなんだろう……。
ボクが疑問を抱くなか、コーさんは続けました。
声の大きさや役職では課題の優先順位を判断できない
声の大きさや、『社長が言っていたから』という理由だけで優先順位を決めると、本質的な課題を見失ってしまう。
一番大切なのは、その課題を解決することが「工場全体の最適化」につながるかどうか、なんだ
工場の全体最適は「コストはそのままで出荷数を増やす」こと
ジムリン、そもそも「工場の目的」ってなんだと思う?
え…っと。
「モノを作ること」ですか?
そうだね。
作ったモノは、お客様に届けて売上にしなければ意味がないよね。
だから工場は「モノを作って売上を上げる」ことまで見据えなければならない。
そう考えると工場の目的、つまりゴールは「出荷する」ことだよね。
どれだけ素晴らしい改善をしても、出荷数が増えなければ、会社の売上は伸びない。
だからこそ、今あるリソースのままで、どうやって出荷数を増やすかを考えるわけだ。
それこそが全体最適の考え方、見方なんだ。
出荷数を左右する課題を探せばボトルネックが浮かび上がる
ボクはノートに書き出した不満のリストを見返しました。
仕掛品の滞留、資材不足、営業からの問い合わせ……。どれも改善が必要な課題に見えます。
ジムリン、その課題を「出荷数を一番妨げている根本原因はどれか?」という視点でもう一度見てごらん。
そうすれば、おのずと優先順位が見えてくるはずだよ。
業務フロー図に現場の声を重ねると「真のボトルネック」が見えてきた!
コーさんのアドバイスをもとに、ボクは第1話で描いた業務フロー図を取り出し、ヒアリングで出た声を一つひとつあてはめていきました。
すると、驚くべき事実が浮かび上がってきたんです。
工場長にタスクが集中している!?
なんと「営業からの問い合わせ」も「作業員からの確認」も、「購買からの依頼」「社長からの指示」も……。
すべての矢印が、たった一人、工場長に向かって集中していたんです。
工場長は、本来やるべき品質管理や生産計画といった管理業務の時間を、各所からの問い合わせ対応に奪われていました。
この状態こそが、工場の流れを止め、出荷遅れを引き起こしている真のボトルネックだったんです。
工場長のタスクを仕組み化すれば工場の流れがよくなるんじゃない?
そうか!工場長が対応している仕事のほとんどは、誰かに情報を伝えたり、確認したりする作業だ。
この情報共有を仕組み化できれば、工場長の負担は一気に減るのでは……!?
そう気づいたボクは、「工場長を助ける仕組みづくり」こそが今やるべきことだと確信しました。
後日、改善会議の場で、ボクは勇気を振り絞って発言しました。
ヒアリングの結果、さまざまな業務が工場長に集中していることがわかりました。
そこがボトルネックになっているので、改善すれば全体の流れがよくなるはずです!
その瞬間、それまで黙って聞いていた工場長が、顔を真っ赤にして立ち上がったんです。
俺がボトルネックだと!? ふざけるな!
工場長の激しい怒号が会議室に響き渡ります。
ボクは「工場をよくするために、事実を伝えただけなのに……どうして?」と、強いショックと無力感に襲われて、その場で立ち尽くすしかありませんでした。
【今回の教訓】工場では出荷数を左右する課題から「真のボトルネック」が見つかる
心が重いですが、今回の学びをまとめてみました。
【今回の学び】
・課題がたくさん出ても、声の数や立場の強さで優先順位を判断してはいけない
・改善のゴールは「コストを増やさず出荷数を増やすこと」であり、そこから逆算して課題の優先度を決める
・今回は、工場長に集中するタスクが真のボトルネックだと判明した
しかし、なぜ工場長はあんなに激怒したんでしょうか……。
次回は、工場長が激怒した理由と、ボクがどう対応したのかをお話しします!
▼前回までのお話はコチラ!
【第1話】「kintoneで生産管理システムを構築せよ!」――総務のジムリンが受けた衝撃の指令
【第2話】kintoneで生産管理・工程管理システムを作るには何から始めるの?小さなアプリから作らない理由
【第3話】工場のボトルネック工程はどこ?人や機械に注目してタスクの滞留点を見つけよう


