kintoneで在庫管理をしていると、貯まったデータをもっと見やすく共有したいと感じる場面が増えてきます。一覧やグラフで在庫を可視化したい、というニーズです。この記事では、kintoneの在庫データをLooker Studioでダッシュボード化する方法を解説します。さらに、安全在庫を割った品目をSlackへ自動通知する仕組みまで作ります。可視化と通知を1つのワークフローでつなぐ鍵が、自動化ツールのn8nです。
目次
kintoneに貯まった在庫や実績データ、どうすればグラフで見える化できる?
kintoneの標準一覧は入力と検索に強い一方で、全体の傾向をつかむには物足りなさが残ります。品目ごとの在庫が今どのくらいあるのか、どう推移しているのかが、数字の羅列からは読み取りにくいためです。

在庫管理を担当していると、拠点や現場ごとの在庫が本部から見えにくい、という悩みを抱えがちです。経営層と現場が同じ最新の数字を持てないと、判断のたびに確認の手間がかかります。見える化したいのは在庫だけではありません。生産実績や設備の稼働状況、さらには原価や余力(稼働キャパシティ)もkintoneには貯まっているのに、一覧のままでは傾向がつかみにくいまま眠っています。
つまり最初の課題は、kintoneに貯めたデータをグラフや表として「見える形」に変えることです。次の章では、その具体的な手段から見ていきましょう。
kintoneの在庫データはLooker Studioでダッシュボードにできる
kintoneの在庫データを可視化する現実的な方法が、GoogleのBIツールであるLooker Studioの活用です。Looker Studioは、表計算やデータベースの数値をグラフ・表・スコアカードとしてダッシュボード化する無料ツールです。なお、ダッシュボードの正確さは元データ次第です。kintoneの在庫データが正しく入力されている状態を前提に進めます。

Looker Studioを選ぶ理由は、費用と共有のしやすさにあります。基本機能を無料で使え、作成したダッシュボードはURLひとつで関係者に共有できます。閲覧する側に専用ソフトは必要ありません。ブラウザさえあれば、経営層も現場も同じ最新のグラフを見られます。
同じ仕組みは在庫に限らず、生産実績や設備の余力、原価データの可視化にも応用できます。たとえば品目別の在庫推移を折れ線グラフにし、倉庫別の在庫数を棒グラフで並べると、どこに何がどれだけあるかが一画面で伝わります。kintoneの在庫データも、Looker Studioにつなげばこうしたダッシュボードとして可視化できます。まずは可視化の受け皿としてLooker Studioを押さえておきましょう。
可視化だけでは、安全在庫を割っても誰も気づけない
ダッシュボードを作っただけでは、在庫管理の本来の目的である欠品の防止までは届きません。可視化は「見に行けば分かる」状態にすぎず、人が画面を開くまで在庫の異常は誰にも伝わらないためです。
安全在庫を割った品目があっても、担当者がダッシュボードを開かなければ気づけません。忙しい日ほど確認は後回しになり、欠品が起きてから発注する後手の対応につながります。これは在庫に限った話ではありません。生産実績の異常や稼働の遅れなど、閾値を割ったら早く気づきたいデータすべてに共通する弱点です。

では、なぜ可視化ツールは「割れたら知らせる」ことができないのでしょうか。理由はツールの役割分担にあります。
Looker Studioは「見せる」専門で、閾値を割っても通知は出せない
Looker Studioの役割は、データを分かりやすく「見せる」ことに絞られています。数値が基準を下回ったときに自動で誰かへ知らせる、という通知の機能は持っていません。
グラフの色で警告を表現することはできても、それはあくまで画面を見ている人にしか伝わりません。安全在庫を割った瞬間に担当者のスマートフォンへ知らせる、といった能動的なアラートはLooker Studio単体では実現できないのです。可視化ツールだけでは、見える化はできても「気づける化」までは届きません。
直接接続ツールでも「可視化」はできても「割れたら通知」はできない
kintoneとBIツールを直接つなぐ接続サービスも、状況は同じです。データを取り込んで可視化するところまでは担いますが、安全在庫割れの通知は守備範囲の外にあります。
こうした直接接続という選択肢は、可視化を手早く始めるには有効です。ただし「閾値を判定して外部へ知らせる」という一手間は、接続して表示するだけの仕組みには含まれていません。可視化と通知の間には、条件を判定して知らせる処理を挟む必要があります。その役割を担えるのが、次に紹介するn8nです。
n8nならデータ取得・可視化・Slack通知を1つのワークフローでつなげる
可視化と通知を両立させる具体的な手段が、自動化ツールn8nの活用です。n8nは、kintoneをはじめとする多数のサービスを線でつなぎ、データの受け渡しや処理を自動化するツールです。プログラミングをせずに、処理のまとまりを表す「ノード」をつないでワークフローを組み立てられます。n8nの基本については、【超入門】n8nとは?kintoneと生成AI連携のはじめかたで解説しています。

n8nが中継役として間に入ると、在庫データの取り込みから安全在庫との比較までを自動化できます。さらに可視化用データの更新とSlackへの通知も、同じ流れの中でまとめて実行できます。ここからは、その組み立て方を手順に沿って見ていきましょう。
まずkintone在庫アプリに「安全在庫」の基準値を持たせる
最初に用意するのは、通知の判定基準となる「安全在庫」の数値です。品目ごとに「これを下回ったら発注したい」という在庫の下限を、kintoneの在庫アプリに数値フィールドとして持たせます。

基準値を先に決めておくと、あとの比較処理がシンプルになります。現在庫のフィールドと安全在庫のフィールドを並べておけば、n8n側は2つの数値を比べるだけで「割れたかどうか」を判定できます。まずはkintone側で、比較のものさしを整えておきましょう。
n8nのScheduleトリガーで在庫データを定期的に取り込む
次に、n8nのScheduleトリガーで在庫データの取り込みを自動化します。Scheduleトリガーは、決めた間隔でワークフローを自動的に動かす起点のノードです。

設定する間隔は、運用に応じて選べます。
- 1時間ごと
- 毎朝9時
- 15分ごと
トリガーに続けてkintone用のノードを置けば、在庫アプリのレコードの取得は自動です。この2つをつなぐだけで、人が操作しなくても最新の在庫データが定期的にn8nへ流れ込みます。
取得した在庫を安全在庫と比較し、割れた品目だけを抽出する
取り込んだデータは、安全在庫と照らして「割れた品目」だけに絞り込みます。n8nのフィルタ用ノードを使い、現在庫が安全在庫を下回ったレコードだけを通す条件を設定します。

この絞り込みが、後続の通知を「本当に知らせるべき品目」に限定する要になります。すべての品目を毎回通知すると、Slackが情報であふれて肝心の警告が埋もれてしまいます。割れた品目だけを抽出することで、通知は「今すぐ動くべき合図」として機能します。
Google Sheetsへ書き込んでLooker Studioのダッシュボードに反映する
可視化用のデータは、Google Sheetsを経由してLooker Studioへ渡します。n8nのGoogle Sheets用ノードで、取得・整形した在庫データをスプレッドシートへ書き込む流れです。
Looker StudioはGoogle Sheetsをデータソースとして直接読み込めます。n8nがシートを定期的に更新し、Looker Studioはそのシートを参照します。この形にすれば、ダッシュボードは自動で最新の在庫を映し続けます。n8nでkintoneのデータを外部サービスへ流す具体例は、Google Analytics × n8nでアクセスデータをkintoneに自動表示した事例も参考になります。
安全在庫を割った品目をSlackへ自動通知する
仕上げに、割れた品目をSlackへ自動で知らせるノードを加えます。先ほど抽出した品目の情報を、Slack用のノードから指定のチャンネルへ送ります。
もし社内でMicrosoft Teamsを使っている場合は、Teams用のノードに差し替えればOKです。

Slack通知には品目名・現在庫・安全在庫の3項目を含めておくと、受け取った担当者はメッセージだけで状況を把握できます。可視化と同じワークフローの中で、通知までを一続きで実行できます。これで「見える化」と「割れたら知らせる」が1本の流れにまとまります。
SlackもGoogle Sheetsも無料枠、n8nはセルフホストのサーバー費用だけで始められる
導入のハードルは、費用と工数の両面で抑えられます。Slack・Google Sheets・Looker Studioは、いずれも無料枠から使い始められます。n8nはセルフホスティングを選べば、サーバー費用だけで運用できます。具体的な金額はサーバーのプランによって変わるため、目安は後述の関連記事で確認してください。

工数の中心は、最初にノードをつないでワークフローを組む設定です。一度組めば、あとは自動で動き続けるため、日々の運用の手間は軽く済みます。自社での構築が難しい場合は、初期のワークフロー作成だけ外部の支援を受け、運用は自社で回す進め方も選べます。
対象は少しずつ広げれば十分です。まずは1つのアプリ・数品目のスモールスタートで試し、動きを確認してから範囲を広げれば、投資判断もしやすくなります。n8nの料金体系や安全な導入手順は、n8nのセルフホスティングで安全にkintoneと連携する方法で詳しく紹介しています。小さく始めて効果を確かめられる点が、この仕組みの取り入れやすさです。
在庫も実績も、Slack通知まで作ればkintoneは人の監視から自立する
在庫管理の仕組みは、可視化に通知を足して初めて完成に近づきます。担当者が画面を見に行かなくても、安全在庫を割った瞬間にSlackが知らせてくれるからです。人が張り付いて監視する運用から抜け出せます。

同じ仕組みは在庫だけにとどまりません。生産実績や設備の余力(稼働キャパシティ)、原価データの異常にも横展開すれば、kintoneは「貯めるだけの置き場」から「異常を自分で知らせるデータの土台」へと変わります。可視化はゴールではなく、データを動かすための出発点です。せっかくkintoneに貯めたデータを箱の中で眠らせず、気づきと行動につなげていきましょう。
まとめ
kintoneの在庫データは、Looker Studioで可視化するだけでは欠品を防ぎきれません。安全在庫割れをSlackへ通知するところまで作ると、欠品を後手に回さない在庫管理に近づきます。可視化ツールや直接接続だけでは通知まで届きませんが、n8nを中継役に据えれば、取得・可視化・通知を1つのワークフローで両立できます。

小さく始めて効果を確かめれば、同じ仕組みを実績や稼働データの可視化にも広げられます。自社のkintoneでも可視化とアラートの両立を実現したい方は、構築のご相談としてお気軽にお問い合わせください。


