発注はkintone、会計はfreeeで管理し、両者を連携させて運用している。そんな経理担当の方から、月末の突合作業についての悩みを耳にすることがあります。
「連携させれば、発注したものが買掛金として正しく計上されているかまで自動でチェックできる」。そう考えるのは自然なことでしょう。ところが実際には、連携できたはずなのに月末はExcelを開いて手作業で突き合わせている、という声も聞こえてきます。
この記事で整理するのは、なぜ連携だけでは突合が自動にならないのか、という点です。あわせて、発注と買掛金の照合をどこまで自社の手で自動化できるのかを、自社で検証した内容をもとにお伝えします。
目次
kintoneとfreeeを連携すれば、発注と買掛金の突合も自動になるのか
発注データはkintone、買掛金はfreee。この2つを連携させれば、発注した金額がそのまま買掛金として計上されます。両者が食い違っていないかも自動でたしかめられると考えて、まず連携の方法を調べ始めるのは自然な流れでしょう。
たしかにkintoneとfreeeをつなぐ連携の仕組みはあります。発注のデータをfreeeへわたすところまでは、連携で自動化できるのです。
もっとも、「発注と買掛金が一致しているか」をたしかめる作業は、それとは別の話になります。ここを分けて考えないと、連携を入れたのに月末の手作業が消えない、という状態に陥りかねません。
連携でできるのは転記まで。突合はn8nを挟むと週次で自動化できる
発注と買掛金の突合は、n8nという連携ツールを挟めば週次で自動照合でき、食い違ったものだけを通知で受け取れます。
押さえておきたいのは、連携でできることの範囲です。kintoneとfreeeをつなぐ連携プラグインができるのは、あくまで「データの転記」にとどまります。
これは片方のデータをもう片方へわたす一方向の処理です。2つのシステムからデータを取得して突き合わせ、食い違うものだけを抜き出す「双方向の照合」は、連携プラグインには含まれていません。
n8nのMergeノード・Codeノードという機能が力を発揮するのは、まさにこの「双方向の照合」の領域です。n8nは2000以上のサービスをつなげる自動化ツールで、kintoneとの連携方法や基礎はkintoneユーザーのための生成AI実践大全でも紹介しています。

月末にまとめて突き合わせるから、未計上が決算間際まで見つからない
そもそも、なぜ発注と買掛金の突合が「月末の一括作業」になってしまうのでしょうか。理由は、発注と会計が別々のシステムに分かれているからです。
発注はkintoneに入力し、買掛金はfreeeで計上します。連携で転記まではできても、両者が一致しているかをたしかめる判断は人が担うため、締めのタイミングでまとめて突き合わせる運用が残ります。この作業は、買掛金の消込とも呼ばれるものです。
その結果、発注したのに計上されていない、あるいは二重に計上されているといった食い違いに気づくのが、いつも決算間際になってしまうのです。
早く気づけば数分で直せる食い違いも、放置されるほど原因の追跡が難しくなります。発覚した時点で時間が経っていると、発注書や納品の履歴を一件ずつ遡って原因を特定する作業に追われてしまうのです。
もう一つ見落とされがちなのが、突合の属人化です。突合が特定の担当者の目視や経験に頼っていると、その担当者が代わったり休んだりした月には、同じ精度で食い違いに気づけません。
では、この照合を仕組みにするのは大がかりな開発案件なのでしょうか。ここも切り分けが必要です。
SIerに大きな開発を発注しなくても、kintoneのアプリ設定に加えて簡単な処理を書ける担当者がいれば、自社で手が届く範囲です。 ただし、技術的に組めるかどうかと、社内で手を動かす時間を取れるかどうかは別の問題になります。この点は記事の最後であらためて触れます。
連携プラグインを入れても、突合は結局Excelの手作業に戻る
ここからは、連携を入れた現場で実際に起きた詰まりを、踏んだ順に見ていきます。
連携設定を一通り見ても、発注と買掛金を突き合わせる項目がなかった
連携プラグインを導入し、設定画面を一通り確認したときのことです。取引や請求書を作る機能、freee側の決済ステータスをkintoneに取り込む機能は見つかります。
ところが、発注と買掛金を突き合わせて食い違いを抜き出す設定は、どこにも見当たりませんでした。 連携でできるのは転記までで、発注と買掛金を突き合わせる処理は対象外なのです。
機能の範囲はfreee for kintone の概要でもたしかめられます。結局、突合はExcelでの手作業に戻ることになりました。
件数が増えると、目視の突合で計上漏れと二重計上を見落とす
月末になると、kintoneとfreeeからそれぞれExcelを書き出し、目で追いながら突き合わせます。件数が数十件のうちはなんとかなりますが、発注件数が増えるほど見落としが出てきます。
特に危ないのが、月の途中で追加発注や取消、金額の変更が入った回です。一度確認したつもりの明細でも、あとから条件が変わっていると対応漏れに気づけません。 こうして未計上や二重計上が、あとになって表面化してしまいます。
単価や端数の差で金額が合わず、どこがズレたか追えない
金額の突合にも落とし穴があります。発注額と計上額が数円から数十円ずれているだけでも、一致の判定は崩れてしまうのです。
原因は単価の丸め方や端数の処理の違いであることが多いのですが、明細が並ぶなかから、どの行の金額がなぜズレているのかを目で追い切るのは困難です。 ここで時間を取られ、突合そのものが億劫になっていきます。
n8nで両者を突き合わせ、合わないものだけを毎週あぶり出す
先ほどの3つの詰まりは、n8nのMergeノードとCodeノードによる照合で解消できます。組み立て方を実行順に見ていきます。

ここからは、実際にkintoneアプリとn8nの画面を示しながら組み立てを追っていきます。上の図の流れをn8nの画面で組むと、次のようなワークフローになります。
発注番号をキーに、kintoneとfreeeのデータをMergeノードで突き合わせる
最初のステップは、「突き合わせる項目がなかった」という詰まりへの対策です。n8nでkintoneの発注データとfreeeの買掛金データをそれぞれ取得し、発注番号を共通のキーにしてMergeノードで突き合わせます。 Mergeノードは、2つのデータを指定したキーで紐付けて1つにまとめる機能です。実際の設定画面では、両者の発注番号どうしを突き合わせるよう指定します。
前提になるのは、freee側にも発注番号が記録されていることです。freeeの取引には摘要欄などがあるので、発注番号をそこに入れておく運用にすると、両者を確実に紐付けられます。キーをそろえておくことが、照合の出発点になるわけです。
kintone側の発注管理アプリは、照合キーになる発注番号を含むシンプルな構成で用意します。実際の画面は次のとおりです。
Codeノードで「発注あり・計上なし」「金額相違」「二重計上」だけを抽出する
2つ目のステップは、「件数が増えると見落とす」という詰まりへの対策です。Mergeで突き合わせた結果を、Codeノードで判定します。Codeノードは、簡単な処理を書いて自由な条件でデータを絞り込める機能です。
ここで抜き出すのは、「発注はあるのに計上がない」「金額が食い違う」「同じ発注が二重に計上されている」という3つのパターンだけです。 一致している大多数の明細はそのまま通し、人が確認すべき食い違いだけを残すわけです。件数が増えても、人が見るのは食い違いの数件だけで済みます。
この判定を担うCodeノードの中身は、次のようになっています。3つのパターンを見分ける条件を書いています。
検収・請求書待ちの正常な未計上を除くため、一定期間を過ぎた発注だけを照合する
誤検知を防ぐうえで、ここが大切な勘所になります。発注してから検収を終え、請求書が届いて計上されるまでには、正常なタイムラグがあります。
発注した直後の明細まで「計上されていない」と拾ってしまうと、通知が正常な未計上であふれて使い物になりません。
そこで、発注日から一定の期間、たとえば自社の検収から計上までの標準的な日数を過ぎたものだけを照合の対象にします。 この一手間を入れておくと、本当に確認すべき食い違いだけが通知に上がるようになります。
検証用のデータで実際に動かすと、正常な未計上を期間で除いたうえで、確認すべき不一致だけが残ります。
週次で自動実行し、見つかった不一致はSlackとメールで担当者に届ける
組んだ照合は、n8nのスケジュール機能で毎週自動的に動かします。食い違いが見つかったときだけ、月末を待たずに、担当者へSlackやメールで知らせます。
これにより、突合が「月末にまとめてやる作業」から「毎週その週のうちに片づける確認」に変わるのです。
【実装担当向け】金額照合は、許容する端数の差を先に決めておく
実装を担当する方向けの補足です。読み飛ばしても記事の理解には差し支えありません。
金額の照合では、単価の計算や端数の処理の違いで、本来は問題ない明細まで食い違いとして拾ってしまうことがあります。これは「単価や端数の差で金額が合わない」という詰まりの裏返しでもあります。あらかじめ、何円までのズレは許容するかという基準を決めてCodeノードに組み込んでおくと、誤検知を抑えられます。
不一致が決算前に見つかれば、原因をたどれるうちに直せる

ここまでの照合を組むと、現場の状態はどう変わるでしょうか。これまで月末にまとめて突き合わせていた食い違いが、毎週見つかる状態に変わります。
発覚が早ければ、原因が新しいうちにたどって直せます。 決算間際になって発注書や納品履歴を遡る、あの作業から解放されるわけです。
実際に組むにあたっては、いくつかの前提を分けて考えることをおすすめします。技術的に組めるかどうか、社内で手を動かす時間を取れるかどうか、そしてこの進め方でいくと社内で決められるかどうかは、それぞれ別の話になります。
照合の仕組みそのものは、kintoneのアプリ設定に加えて簡単な処理を書ける担当者がいれば、SIerに頼らず自社で組める範囲です。
費用の面を見ても、n8nはセルフホスティングなら追加のライセンス費用なしで動かせます。クラウド版でも最安プランは月額20ユーロほどで、クレジットカードなしで試せる無料トライアルもあります。
エンジニアに頼らず基幹システムとkintoneをn8nでつないだ例は、エンジニアに頼らず、販売管理システムとkintoneをn8nで連携してみたでも紹介しています。
一方で、手を動かす時間を社内で取れるかどうか、そしてこの進め方でいくかどうかは、技術とは別の論点になります。後者は、最終的には経営判断の領域です。
まとめ
kintoneとfreeeを連携させても、自動化できるのは発注データの転記までです。発注と買掛金が一致しているかをたしかめる双方向の照合は、連携プラグインには含まれていません。
この照合は、n8nのMergeノードとCodeノードで組めます。発注番号をキーに突き合わせ、食い違いの3パターンだけを抜き出し、検収待ちの正常な未計上は期間で除外します。これを週次で自動実行すれば、未計上や二重計上を決算前に自分たちの手で見つけられます。
最後に
発注と買掛金の突合をどこまで自動化できるかは、扱う件数やfreee側の運用、社内で手を動かせる時間によって変わってきます。
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