商談に同席していたジムリンは、帰り道でジョーさんにこうこぼした。
今日は、受注生産の組立系製造業さんとの商談に同席したんですけど……工程計画が、その人にしかわからなくなっているっていう悩みを聞いたんです
それ、工程計画を担当できる人が数人しかいない現場だと、あるあるな話かもね
しかも、その会社さん、以前に数千万円する生産スケジューラを検討したこともあるみたいで……でも、ちょっと意外な理由で見送ったらしいんです
というわけで今回は、実際にあった商談でのやり取りをもとに、その意外な決め手をご紹介します。
目次
属人化を解消できる生産スケジューラは、本当にあるのだろうか
半導体製造装置の搬送装置をつくる、受注生産の組立系製造業。工程計画を担当する2〜3名は、顧客都合で変わる優先順位に振り回されているのが実情です。
DX担当者は「もっと現実的な価格帯の生産スケジューラはないか」と調べ始めます。きっかけは、過去に高額な製品を検討し、機能過多を理由に見送った経験です。それでも属人化の問題は解決しないまま残り、あらためて選択肢を洗い直すことになりました。
需要が増えるほど顧客都合の優先順位変更・割り込みが頻発し、Excelでの手動リスケが追いつかなくなっていきました。同じような状況は、受注が増えていくのに工程管理を回せるのがまだ自分だけという試作品工場の記事でも取り上げています。
現場の工程計画担当者は、当時をこう振り返ります。
「割り込み割り込みでどんどん優先順位が変わったりとかするんです。今は手作業でやっているので、途中でそれができなくなって結局、工程が何なのっていう、もう使い物にならない工程表になっていたりする。」
大変な状況のなか、実際の商談で聞いた声をもとに、意外な結論までお伝えします。
組立系製造業ならではの、工程管理の難しさ
対象の工場は、受注情報を工程へ割り付ける形態で、半導体製造装置の搬送装置を製造する現場です。工程計画担当者は2〜3名の中堅クラスで、1つの工場を担当しています。
量産品であれば、一度計画を組めば次の受注でも使い回せますが、受注生産の場合は案件ごとに仕様も納期も異なり、計画を組み直す作業そのものが毎回発生するのです。そこに顧客都合の優先順位変更が重なると、Excelでの手動リスケでは追いつかなくなっていきます。
業種・規模を問わず、この種の悩みを抱える現場は多くあります。
属人化を防ぐ鍵は、機能の多さにはない
今回のケースで見えてきたのは、属人化を防ぐ鍵は機能の多さにはないということでした。
「機能の多さ」ではなく「直感的な操作性」
機能の網羅性で選ぶより、経験の浅い人でも直感的に扱えるかどうかで選ぶ方が、属人化を防ぐことにつながります。多機能・高額な汎用スケジューラーを導入することよりも、機能を絞り込んだ製品を選ぶことの方が、結果的に属人化から抜け出す近道になったのです。
本当に選び直したいのは、製品ではなく“判断の軸”ではないか
本当に選び直したいのは、生産スケジューラという製品そのものではなく、製品を選ぶときの判断の軸だったのではないでしょうか。機能の網羅性ではなく、経験の浅い人でも直感的に扱えるかという軸を持てているかどうかが、属人化を防げるかどうかの分かれ目になります。
工程計画が特定の担当者に集中し、実情が本部から見えなくなる理由
現場の工程計画担当者は、属人化の実情をこう表現します。
「その人しかわからない。いろんなノウハウがあってですね、この人じゃないと今こういう工程を立てて、こうして、こうしてっていうのが作れないので。」

現行の管理方法はExcelによる工程管理で、実績管理は別システムで行っているため、計画と実績の連携ができていません。計画通りに進まなくなるたびに、両者を突き合わせる作業が担当者の負荷として積み上がる構造です。
属人化は、現場だけの問題にとどまりません。今回の窓口となったDX担当者は、工程計画そのものの実務者ではなく、属人化・リスケ対応・計画実績連携・進捗共有といった複数の課題を俯瞰して整理する立場でした。
Excelでの工程管理は、そうした立場から見ると現場の実情そのものが見えにくく、実績データの把握も不十分になりがちです。
こうした構造があるからこそ、経験の浅い人でも直感的に扱える生産スケジューラを選び直すという判断の軸が、現場だけでなく本部側にとっても重要になってきます。
属人化を仕組みで解消する考え方は、生産管理に向いている人・向いていない人という記事でも取り上げているので、あわせて参考にしてください。
常識的な対策(高機能な汎用スケジューラー)が、この軸に届かなかった理由
検討した製品は、過去に2つありました。
1つ目は、数千万円規模の大手メジャーなスケジューラー製品です。機能は十分すぎるほど揃っていたものの、実際にやりたいことに対しては明らかに機能過多で、投資対効果が見合わず導入を見送っています。
2つ目は、別の汎用スケジューラー製品でした。人員・設備ごとの技能レベルに応じて所要時間を設定するなど、高度なカスタマイズには対応していました。しかし担当者からは「できるけど、やりにくいんですよね」という声が上がっていたといいます。比較検討を進めるなかで、以下の評価も挙がりました。
- 一つのことをするために複数のステップが必要
- 見た目も操作性も分かりにくい
- 工程のつながりをExcel上でマスタデータから手動で組む必要があり、ドラッグアンドドロップのような直感的な操作はできない
担当者の間では、使いこなせないという感触が広がっていたとのことです。

どちらの製品も機能自体は十分でした。にもかかわらず属人化の解消には届かなかったのは、経験の浅い人でも直感的に扱えるかという軸を満たしていなかったからです。高機能であることと、属人化を防げることは、じつは別の問題だと分かります。
工程管理のツールにどんな選択肢があるかは、工程管理のツールって何があるのという記事でも整理しているので、比較検討の参考にしてください。
機能を絞り込み、直感的な操作性を重視した生産スケジューラに切り替えた例
こうした比較検討で壁にぶつかった工場が選び直したのは、機能を絞り込み、直感的な操作性を重視した生産スケジューラでした。同じように高機能な製品の比較検討で壁にぶつかる工場は、一定数あります。
分かれ目は、ドラッグアンドドロップで組み替えられるかどうか
計画の組み替えや複数パターンの検討を、ドラッグアンドドロップのような直感的な操作で行えるか。画面を見ただけで工程のつながりが把握できるか。比較検討を重ねるなかで、この2点こそが属人化を防げるかどうかの実質的な分かれ目だったとのことです。
特定の担当者に頼らない工程表へ
切り替え後は、これまで特定の担当者しか触れなかった工程表を、ほかのメンバーも操作画面を見ながら組み替えられるようになり、担当者不在時の遅れが目に見えて減ったといいます。
現場だけでなく、DX・情シス側にも変化が及ぶ可能性があるでしょう。計画と実績を同じ画面で扱えるようになれば、これまで見えにくかった現場の状況を、本部側からも把握しやすくなると考えられます。

受注情報を入力するだけで、工程へ自動的に割り付けられる状態になる
生産スケジューラを選び直すと、変わるのは工程計画担当者の役割そのものです。
あらかじめ決めたルールに沿って工程へ自動で日程を組めるようにしておけば、担当者はゼロからリスケを組み立てる必要がなくなり、問題がある箇所だけを確認・調整すればよくなります。
機能の多さではなく直感的な操作性を軸に選び直したからこそ、特定の担当者の経験と勘に頼っていた工程表づくりから、経験の浅いメンバーでも同じ精度で工程表を任せられる体制へと変わりました。
現場が回るようになるだけでなく、DX・情シス側も実績や進捗を把握しやすくなり、本部が後追いで状況を確認せざるを得ない場面も減っていくと考えられます。
Before/Afterで見る、選び直しによる変化
| 項目 | Before(Excelでの手動リスケ) | After(ルールに沿った自動割り付け) |
|---|---|---|
| 計画の作成 | 担当者の経験と勘に依存する | 経験の浅いメンバーでも同じ精度で組める |
| 割り込み対応 | 手作業で最初から組み直す | 問題がある箇所だけを確認・調整すればよい |
| 引き継ぎ | 特定の担当者しかできない | 誰が担当しても同じ判断ができる |
| 本部からの見え方 | 実績・進捗が後追いでしか把握できない | 計画と実績を同じ画面で把握できる |
高額な汎用スケジューラーの比較検討で「機能が多いほど良いわけではない」と気づいたなら、次の一歩として、シンプルな操作性と現実的な価格を軸に選び直してみてはどうでしょうか。詳しい金額はここではお伝えできませんが、数千万円規模の製品と比べれば、まとまった投資をせずに導入できている企業が多いのも実情です。
番外編:GROW工程管理でできること
今回のケースだと、GROW工程管理のなかでも、ガントチャート上で工程バーをドラッグして開始日時を変更できる機能が、特に効いてきそうです
ドラッグアンドドロップのような直感的な操作で組み替えられるかどうかが、今回のケースでも属人化を防ぐカギでした。GROW工程管理はガントチャート画面で工程バーをドラッグするだけで開始日時を変更でき、経験の浅い担当者でも直感的にスケジュールを調整できます。




