入社手続きの書類督促の手間を削減!kintoneとn8nで人事業務を自動化するワークフロー

入社書類の督促を繰り返すのは当たり前だと、諦めていないか

入社が決まった人に対して会社側が行う入社手続きでは、誓約書や扶養控除申告書、住民票など、提出してもらう書類がいくつもあります。

総務・人事の担当者にとって、これらを期日までに集めきる作業は、毎回の悩みの種ではないでしょうか。

よくあるのは、担当者の記憶を頼りに一人ひとりへ個別メールを送る督促です。「あの人はまだ誓約書を出していない」「この人は住民票が未着だ」と、Excelの一覧をにらみながら催促していきます。とくに4月入社が集中する時期には、対象者が一気に増え、督促そのものが追いつかなくなります。

こうした督促を、手作業で何度も繰り返すのが当たり前だと、半ば思い込んでいないでしょうか。もっと楽になる方法があるはずだと考えつつも、「きちんと自動化するなら、専門のベンダーに発注する大がかりな開発になる」という思い込みが先に立ちます。そのまま手作業を続けているケースは少なくありません。

会社側の入社手続きは、社会保険や雇用保険、住民税の手続きまで含めると幅広い業務です。この記事はそのなかでも、担当者が特に詰まりやすい「提出書類の回収と督促」に絞って扱います。その督促のどこまでが本当に「手作業でしか回せない部分」なのか、順に見ていきましょう。

kintone標準でできる督促は活かし、届かない3点を補えば督促は自動で回りきる

先に結論をお伝えします。入社書類の督促は、ベンダーに発注する大がかりな開発をしなくても、いま使っているkintoneの延長で、稟議にも通しやすい形で自社の手によって進められるようになります。

ポイントは、すべてを一から作ることではありません。kintoneの標準機能でできる督促はそのまま活かし、標準では手が届かない3点だけを補うという切り分けにあります。

その3点とは、提出状況を1か所で俯瞰すること、未提出者だけを段階的に督促すること、そして社外の相手にも督促を届けることの3つです。この3点はn8nという外部ツールで補い、そのうち社外へ送る督促文面の作成だけを生成AIにも任せます。

3点さえ押さえれば、未提出者への督促は自動で回り、回収の抜けは消えていきます。どこで標準が止まり、どこをどう補うのか、順に見ていきましょう。

入社手続き 会社側の書類督促を、kintone標準でできる範囲と、n8n+生成AIで補う3点に切り分けた全体像の図

記憶と個別メールに頼る督促は、人が増える繁忙期にこそ抜ける

督促が記憶頼みになる理由は、提出状況がひとつの画面で見える形になっていない点にあります。「誰に何を催促したか」が担当者の頭のなかにしか残らないのです。Excelの一覧に印をつけていても、書類の種類ごとに提出・未提出が入り混じると、結局は担当者の記憶が頼りになります。

提出してもらう書類は、入社者の人数と書類の種類を掛け合わせた数だけ発生します。数人の入社なら記憶でも追えますが、4月入社が重なると対象が一気に膨らみ、記憶では追いきれません。督促の抜けは、もっとも人手が足りない繁忙期にこそ起こるのです。

目指したいのは、督促を担当者個人の記憶と気合いから切り離し、繁忙期でも同じ精度で回る仕組みに変えることです。これは単なる時短ではありません。担当者が代わっても回収が回る状態をつくる、という業務運用そのものの変化なのです。

なお、この仕組みづくりで手を動かす範囲は2つに分かれます。提出書類のチェックリストをkintoneのアプリとして用意する部分は、kintoneのアプリ作成に慣れた実務担当者でも十分に手が届きます。

一方、後述するn8nによる自動化は、外部サービスとのAPI連携が絡むため情シスやDX担当が支える範囲です。API連携が未経験だと認証まわりでつまずきやすい傾向があります。技術的に実現できるかどうかと、その作業を社内で回せるかどうかは、分けて考える必要があります。

費用の面でも、大がかりな投資は前提になりません。n8nはオープンソースのセルフホスト版を無料で使えるほか、クラウド版も年契約で月20ユーロ程度から利用できます。ベンダーにシステムを発注する場合と比べれば、はるかに小さく始められる規模です。

kintone標準リマインダーだけでは、督促が「期日が近い単発通知」で止まった

では、kintoneの標準機能だけで督促を組むと、どこまでできるのでしょうか。

kintoneには「リマインダーの条件通知」という標準機能があります。

基準日(日付や更新日時など)から何日前・何日後といったタイミングを指定し、条件を満たしたレコードの担当者へ通知を送る機能です(詳しい設定はkintoneヘルプ「リマインダーの条件通知」で確認できます)。

提出期限が近づいた入社者のレコードに通知を出す、という基本の督促はこれで組めます。

ところが、この標準リマインダーだけで運用してみると、できるのは「期日が近い」ことを知らせる単発の通知まででした。そこから先に、3つの壁があります。いずれも、標準機能の設計上どうしても越えられない境界です。

kintone標準リマインダーの単発通知で止まる3つの壁(一覧俯瞰・段階的督促・社外到達)を示した図

誰がどの書類を未提出かを、1レコードで一覧のまま追えない

ひとつ目の壁は、提出状況の俯瞰です。

条件通知はあくまで条件に合うレコードへ通知を飛ばす機能であり、「誰が・どの書類を・まだ出していないか」を1か所でまとめて見られる画面まではつくってくれません

kintoneの一覧機能で絞り込みはできます。ただし入社者と書類種別を掛け合わせた提出状況をひとつの表で俯瞰しようとすると、標準の一覧だけでは組みづらいのが実情です。結局はExcelの一覧に戻ってしまいました。通知は飛ぶのに、全体像は依然として担当者の手元の表にしかない、という状態です。

未提出者だけを抜き出して、本人→上長と段階的に督促を強められない

ふたつ目の壁は、督促の段階付けです。督促は、一度送って終わりではありません。

期日を過ぎても出てこない相手には、本人への再通知から上長への連絡へと、段階的に強めていきたいものです。

しかし、kintoneの標準リマインダーに、こうした段階的な引き上げ(エスカレーション)の仕組みは用意されていません。

公式ヘルプの通知先設定(同ページ参照)にも、経過日数に応じて通知先を切り替える機能の記載はありません。「未提出のまま一定日数を超えた人だけ、今度は上長へ」という段階的な制御は、標準では組めませんでした。

社外メールなど、kintone通知が届かない相手には送れない

みっつ目の壁は、通知の届け先です。kintoneの通知先に指定できるのは、ユーザーや組織、グループ、あるいは作成者・ユーザー選択といったフォーム上のフィールドに限られます。いずれもkintoneのアカウントを持つ相手が前提です。

公式ヘルプの通知先設定(同ページ参照)にも、社外のメールアドレスを直接指定する方法は記載されていません。

入社前の内定者や、まだkintoneアカウントを持たない相手に督促を届けたい場面では、標準通知は届きません。結局は担当者が手でメールを送ることになりました。

標準でできる督促は残し、届かない3点だけをn8n+生成AIで補う

3つの壁は、いずれも標準機能の境界そのものです。そこで、標準で足りている督促はそのまま残し、越えられなかった3点だけをn8nという外部の自動化ツールで補います。3点のうち社外へ送る文面の作成だけは、生成AIにも手伝ってもらいます。壁に対応する形で、実際に組む順に見ていきましょう。

kintoneチェックリストからn8nが未提出者を検知し本人→上長へ段階督促、生成AIが文面を作り社外メール送信する自動化の流れ図

ここからは、実際にn8nで組んだワークフローの画面とあわせて、3点をどう補うのかを「組む順」に見ていきます。まずは、これから組み上げる全体像です。手動での実行、あるいは1日1回の定期実行をきっかけに、未提出書類の抽出から段階的な督促メールの送信までが、途切れず一続きにつながっています。個々のノードの中身は、このあと壁ごとに順番に開いていきます。

提出書類チェックリストを「入社者×書類種別」のマトリクスでkintoneに持ち、未提出を一覧にする

ひとつ目の壁(俯瞰できない)への対策です。はじめに、入社者と書類種別を掛け合わせた提出状況を、kintone上のチェックリスト(一覧表)として持ちます。誰がどの書類を提出し、どれが未提出なのかが1画面でわかる土台をつくるわけです。

下の画面が、実際に用意した入社書類チェックリストです。入社者を1行に、誓約書・扶養控除申告書・住民票・給与振込口座届といった書類種別を列に並べ、それぞれ提出済みか未提出かがひと目でわかるようにしてあります。督促状況や経過日数の欄はまだ空ですが、この欄が、このあとn8nの処理によって自動で埋まっていきます。

この土台があって初めて、「未提出のレコードだけを拾う」という次の自動化が成り立ちます。kintoneの一覧を見やすく整える工夫は、一覧画面での検索・絞り込みを効率化する方法もあわせて参考になります。

n8nで期日超過を検知し、未提出者を本人→上長の順に自動でエスカレーションする

ふたつ目の壁(段階的な督促ができない)への対策です。n8nから定期的にkintoneのチェックリストを確認し、期日を過ぎても未提出のレコードだけを抜き出します。

より正確には、まずチェックリストの全レコードから提出済みの書類を除き、未提出の書類だけを取り出します。下の画面はその抽出結果です。誰のどの書類が未提出なのかが行ごとに整理され、あわせて提出期限からの超過日数もここで計算されています。

抜き出したあとは、超過した日数に応じて連絡先を切り替えます。期日を数日過ぎた段階では本人へ、さらに日数が経っても出てこなければ上長へ、という具合です。経過日数をもとに督促の強さと宛先を自動で段階付けすることで、標準のリマインダーでは組めなかった段階的な引き上げを、n8n側の処理で担います。

どの段階で本人へ、どこからを上長へ引き上げるかの基準は、kintone側のマスタに持たせておきます。こうしておけば、督促を強めるタイミングを、現場が画面上でいつでも見直せます。

このように設計すると、同じ未提出でも超過日数の深さで宛先が分かれます。下のプレビューでは、期日を大きく過ぎた入社者は上長へ、数日の超過にとどまる入社者は本人へ、まだ期日前の入社者には督促を送らず追跡だけ、というように自動で振り分けられています。判断が必要な相手だけが、向こうから浮かび上がってくる状態です。

kintone通知が届かない相手へはn8nからメールを送り、文面は生成AIに書類名と期日を差し込ませる

みっつ目の壁(社外に届かない)への対策です。kintoneアカウントを持たない内定者や社外の相手へは、n8nから直接メールを送ります。これで通知の届け先の制約を越えられるのです。

督促メールの文面は、生成AIに任せます。対象者の名前、未提出の書類名、提出期限をn8nから渡せば、生成AIが一通ずつ督促文を組み立てるため、担当者が文面を手で書く必要はありません。

宛名や未提出の書類名、提出期限といった具体的な情報は、すべてkintoneの確定値がそのまま差し込まれます。生成AIが担うのは、あくまで丁寧な依頼文としての体裁を整えるところだけです。

ただし、生成AIに任せるのはあくまで文面づくりだけです。「誰が未提出か」という判断はkintoneとn8n側のデータで確定させておきます。判断まで生成AIに委ねると、根拠のあいまいな督促につながりかねないためです。こうして組み上がったワークフローを動かすと、督促メールは本人と上長へ段階的に届くようになります。

生成AIを業務に組み込む際の考え方は、kintoneユーザーのための生成AI実践大全でも整理しています。

督促をやめるのではなく、抜けを拾う仕組みを今あるkintoneの延長で持つ

3点をすべて組み込むと、督促は大きく姿を変えます。

提出状況が担当者の記憶のなかにあるうちは、督促はどこまでいっても記憶頼みのままです。

これをkintoneのチェックリストとn8nの自動督促に移すと、未提出者は自動で抽出され、督促は本人から上長へと段階的に飛び、社外の相手にも届きます。

回収状況は一覧画面で一目で把握でき、繁忙期でも抜けを拾える状態になります。督促そのものをなくすのではなく、入社手続きの督促を電子化し、抜けを拾う仕組みに置き換えるわけです。

大切なのは、この仕組みがベンダーへの大がかりな発注ではなく、いま使っているkintoneの延長で組める範囲に収まっている点です。標準でできる督促と、自動化で補うべき3点の切り分けさえ見えていれば、必要な作りは限られます。

ただし、n8nによる自動化は外部サービスとのAPI連携を伴います。技術的に実現できることと、その構築と運用を社内の体制で回せることは別の問題です。

とくにAPI連携が未経験だと認証まわりでつまずきやすいため、手を動かせる人と時間を社内で確保できるかどうかは、あらかじめ体制の話として見定めておくとよいでしょう。

同じkintoneとn8nの組み合わせは、書類回収以外の業務でも応用できます。たとえば商談議事録を案件履歴へ自動でつなぐ仕組みも、標準連携では届かない部分をn8nで補うという同じ考え方で組んだものです。

まとめ

入社書類の督促は、すべてを手作業で抱え込む必要も、ベンダーへ大がかりに発注する必要もありません。

  • kintoneの標準リマインダーでできるのは、期日が近いことを知らせる単発の通知まで
  • 標準では届かない「提出状況の俯瞰」「本人から上長への段階的な督促」「社外への到達」の3点をn8nで補い、社外へ送る文面の作成だけを生成AIに任せる
  • この切り分けが見えていれば、いま使っているkintoneの延長で、督促の抜けを防ぐ仕組みを自社の手で組める

督促を記憶と気合いに頼るのをやめ、抜けを拾う仕組みに置き換える。その現実的な一歩は、標準と自動化の境界を見定めることにあります。

最後に

提出してもらう書類の種類や、督促の運用、社内で手を動かせる体制は、会社ごとに異なります。どこまでを標準で賄い、どこからをn8nで補うのが自社に合うのか、判断がつきにくい場合もあるはずです。

まずは自社の入社手続きの現状をお聞かせいただければ、標準機能でどこまで賄えるか、どこをn8nで補うのがよいかを一緒に見立てます。入社手続きにかぎらず、kintoneを軸にした業務の自動化でお困りのことがあれば、ものづくりAI自動化ファクトリーへお気軽に無料でご相談ください。

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